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サイバー攻撃もコスパ重視!?狙われる既知の脆弱性

  1. 未知の脆弱性と既知の脆弱性
  2. 既知の脆弱性とは?
  3. 既知の脆弱性を利用したサイバー攻撃の手法
  4. なぜ今、既知の脆弱性対策が重要なのか
  5. 効率重視のサイバー攻撃

「サイバー攻撃」と聞くと、多くの人は攻撃者が未知の脆弱性を発見し、それを悪用してシステムに侵入する「ゼロデイ攻撃」を思い浮かべるかもしれません。しかし実際には、攻撃者は常に新たな脆弱性を探しているわけではありません。むしろ、すでに発見され、情報も公開されている「既知の脆弱性」を利用するケースも多く、企業にとってリスクとなっています。

既知の脆弱性を悪用するため、ゼロデイ攻撃のように新たな脆弱性を探し出す必要がなく、攻撃者にとって比較的容易に実行できます。特に、パッチが適用されていないシステムは狙われやすく、放置された脆弱性が重大なリスクとなるのです。このように、サイバー攻撃の多くが「すでに分かっている脆弱性」を悪用しているにもかかわらず、既知の脆弱性に対する対策は十分に行われていないことが少なくありません。

「既知の脆弱性」とは、すでに発見されて公表されているシステムやソフトウェアの弱点のことを指します。こうした脆弱性に対してはセキュリティパッチが提供され、企業や組織はそれを適用することで脆弱性を解消できます。しかし現実には、さまざまな理由からパッチ適用が遅れることがあり、その結果、攻撃者にとって狙いやすい対象となってしまいます。

なぜ既知の脆弱性が放置されるのか

まず、パッチ適用にかかるリソースの不足が一因です。特に中小企業ではITリソースが限られており、システムの更新や管理に十分な人手が割けないことが多くあります。また、パッチ適用にはシステム停止や互換性の確認が必要になることが多く、業務への影響を考慮して対応が遅れるケースも少なくありません。

次に、脆弱性への対応は優先順位が低くなることが挙げられます。新しいシステムの導入や日常の運用業務が優先され、既知の脆弱性への対応は「今すぐ取り組むべき問題ではない」と判断されがちです。こうした判断が重なることで、既知の脆弱性が長期間放置されることになり、結果としてセキュリティリスクが蓄積されてしまいます。

さらに、レガシーシステムも大きな要因です。サポートが終了した古いシステムやアプリケーションを利用している企業は、セキュリティパッチが提供されないため、脆弱性が解消されないまま運用を続けざるを得ません。このようなシステムは更新が難しいため、攻撃者にとって格好の標的となります。

既知の脆弱性のリスク

既知の脆弱性が放置されていると、攻撃者はすでに公開されている脆弱性情報をもとに攻撃を簡単に実行できます。既知の脆弱性を悪用するサイバー攻撃は、企業のデータ流出やシステム障害といった大きな被害を引き起こす可能性があり、対策を怠るリスクは非常に高いと言えます。

既知の脆弱性を利用するサイバー攻撃は、攻撃者にとって効率的で効果的な手段です。公表された脆弱性を利用するため、新たに脆弱性を探す必要がなく、特別な技術やコストをかけずに攻撃を実行できるからです。ここでは、既知の脆弱性を利用した攻撃がどのように行われるか、その手法を説明します。

既知の脆弱性を用いた侵入

攻撃者は、パッチが適用されていない既知の脆弱性を持つシステムやネットワークを特定し、その脆弱性を悪用して内部に侵入します。インターネット上の公開サーバーや、パッチ適用が遅れている企業のシステムは、こうした攻撃の格好のターゲットです。攻撃者は既知の脆弱性に関する詳細情報を容易に入手できるため、侵入は比較的容易であり、特別な技術がなくても成功する可能性が高いです。

マルウェアのインストール

システムやネットワークに侵入した後、攻撃者はマルウェアをインストールします。感染した機器は、情報の窃取だけでなく、さらなる感染拡大の足がかりとしても利用されます。また、近年話題に上がるランサムウェアは、マルウェアの一種であり、データを暗号化し、企業に対して解除のための身代金を要求する手法が一般的です。企業が対応に追われることで、業務停止やデータ損失、さらには情報漏洩のリスクも発生します。

二次的な被害の拡大

既知の脆弱性を使って侵入した攻撃者は、感染したシステムやネットワークを足がかりに、他のシステムやデバイスに攻撃を広げていくことが多くあります。たとえば、企業のネットワーク内で他のデバイスに感染を拡大させたり、さらに重要なデータへアクセスするための特権IDを盗み出したりすることが可能です。こうした被害の拡大により、企業全体に及ぶ深刻なセキュリティインシデントへと発展するリスクが高まります。

特権IDとは、システムやデータに強い権限を持つIDのことです。管理者IDなどがこれにあたり、重要な設定変更やデータアクセスができるため、悪用されると大きなリスクになります。特権IDについて、詳しくはこちらのコラムをご覧ください。

特権ID管理とは?基礎知識やID管理との違いをわかりやすく解説

既知の脆弱性を放置するリスク

パッチ未適用の既知の脆弱性を利用するため、攻撃を防ぐためには企業がセキュリティパッチの適用を怠らないことが最も重要です。しかし、もし脆弱性が放置された場合、攻撃者はその隙を突いて侵入し、データ流出やシステムの機能停止、さらには長期間にわたる攻撃の足がかりを作り出します。企業にとって、既知の脆弱性を放置することは、持続的なリスクを抱えることにほかなりません。

サイバー攻撃がますます巧妙化・ビジネス化する中、ランサムウェアもまた「ランサムウェア・アズ・ア・サービス(RaaS)」として提供され、攻撃者が技術を持たずとも簡単に使えるツールへと進化しています。このRaaSの普及によって、なぜ既知の脆弱性のリスクが増加するのか解説します。

RaaSによって専門知識が不要に

RaaSは、攻撃者がランサムウェア攻撃を手軽に実行できるよう、ツールやインフラを一式で提供するサービスです。これにより、ランサムウェア攻撃はもはや専門知識を持つ一部の攻撃者だけのものではなくなり、技術的な経験がない人でも、簡単にランサムウェア攻撃を実行できるようになりました。特別なトレーニングやリソースが不要なため、サイバー犯罪の敷居が低くなり、多くの新たな攻撃者が生まれやすい環境が整ってしまっています。

既知の脆弱性が侵入経路として利用される

技術的な専門知識を持たない攻撃者は、侵入の手段として「既知の脆弱性」に依存します。既知の脆弱性はすでに情報が公開されているため、詳細な技術知識がなくても、RaaSに付属するツールやマニュアルを使えば容易に悪用できるからです。特にパッチ適用が遅れている企業のシステムは、RaaSによる攻撃者にとって「簡単に侵入できるターゲット」として格好の標的となります。

コスト効率が高く、大量攻撃が可能に

RaaSを利用すれば、攻撃者は低コストで大量のターゲットに攻撃を仕掛けることができます。既知の脆弱性に対して効率的に侵入を図り、ランサムウェアを仕掛けることで、少ないリソースで高い収益を上げることが可能です。これにより、企業は単にランサムウェアのリスクにさらされるだけでなく、複数の攻撃者が同時に既知の脆弱性を狙う「標的の集中」によって被害が拡大する可能性もあります。

既知の脆弱性対策の強化が必須

既知の脆弱性を利用するサイバー攻撃のリスクが増加しています。企業は、パッチ適用を速やかに行い、既知の脆弱性が残らないように管理することで、こうした攻撃リスクを抑える必要があります。また、IT資産管理ツールの活用によって自動化されたパッチ適用やスキャンを行い、リスクの早期発見・対策が可能な体制を整えることが重要です。

サイバー攻撃の世界では、攻撃者も効率を重視しています。専門的な知識や高度な技術がなくても、既知の脆弱性を利用した攻撃が容易に行えるようになった現在、攻撃者は手軽で効果的な方法として「既知の脆弱性」に依存する傾向が強まっています。攻撃ツールの普及や自動化された攻撃手法の登場により、少ないコストで多くの標的に攻撃を仕掛けることが可能になり、結果として企業にとって脆弱性対策の重要性がさらに増しています。

このため、企業はサイバー攻撃者が「コスパ」を重視する現実を踏まえ、攻撃の標的とならない対策をしなければなりません。パッチ適用の徹底や特権ID管理、IT資産管理ツールの活用など、リスクを抑えるための対策をしっかりと講じる必要があります。具体的な対策については、こちらのコラムで解説しています。よろしければご覧ください。

狙われる既知の脆弱性!サイバー攻撃を防ぐセキュリティ対策

Writer 雫田 貴一
WEEDS SYSTEMSのWebマーケティング担当者。
マーケティングだけでなく、システムの導入からセールスのサポートに至るまで幅広く手掛けています。
情報セキュリティに不安を感じるユーザーの悩みや課題を解決すべく、日々情報発信に努めています。