コラム

COLUMN

内部不正のリスクを減らす心理学的アプローチとは?

  1. 内部不正のリスクとその影響
  2. 内部不正が発生しやすい環境の特徴
  3. 心理学的アプローチによる解決策
  4. 内部不正を防ぐための具体的な対策とその効果
  5. 内部不正を防ぐための環境づくりの重要性

近年、企業における内部不正のリスクはますます高まっており、その影響は財務的な損失だけでなく、企業の信用や信頼関係にも深刻なダメージを与える可能性があります。内部不正は、従業員による機密情報の不正アクセスや、不正な操作によって発生するケースが多く、企業全体のセキュリティ体制を脅かす要因の一つです。これに対処するためには、技術的なセキュリティ対策だけでなく、従業員の行動や心理に働きかける対策も同時に行う必要があります。従業員の心理的な要因に注目し、適切な対策を講じることで、内部不正のリスクを効果的に低減することが可能です。

企業の管理体制や従業員が働く環境は、内部不正のリスクを大きく左右します。特に、「責任の分散」や監視体制の不備がある場合、従業員は不正行為に対する心理的な抵抗感が薄れ、不正が起きやすくなります。たとえば、業務上の責任が曖昧で、誰が何を管理しているかが不明確な場合、個々の従業員は「自分が監視されていない」と感じ、不正行為を行う心理的なハードルが下がります。さらに、監視が行き届いていない環境では、従業員が「見られていない」という安心感を抱きやすくなり、不正行為が助長されることが少なくありません。

このように、心理的なハードルが低い環境では、不正が起きやすい要因が重なります。そのため、企業は技術的な対策だけでなく、従業員の心理にも配慮した環境づくりが求められます。

監視の効果と行動抑制:社会的促進

社会心理学では、社会的促進という概念があり、他者に自分の行動が見られていると感じることで、行動が促進される、もしくは抑制される効果があることが知られています。特に、監視されている意識があると、人は望ましい行動を取ろうとする傾向があります。このため、監視やログの取得を明確にし、従業員に「自分の行動はチェックされている」と認識させることで、内部不正の抑止効果が期待できます。

規範に従う行動:同調バイアス

同調バイアスとは、集団の規範や期待に合わせて個人が行動を変える心理的なメカニズムを指します。職場内で倫理的な行動やセキュリティ意識が高く保たれていると、従業員はその規範に従おうとする心理が働きます。逆に、不正が常態化している環境では、従業員も不正を許容する傾向が強まります。したがって、組織としての強い倫理規範や、セキュリティに対する厳しい姿勢を全員で共有することが重要です。

正しい行動の強化:オペラント条件付け

行動心理学のオペラント条件付けでは、特定の行動に対する報酬や罰を与えることで、その行動の頻度を調整できるとされています。これを応用して、従業員が倫理的な行動を取った場合に積極的にフィードバックや報酬を与えることで、正しい行動を強化できます。逆に、不正行為には厳格な罰則を課すことで、リスクを冒すことのメリットを減少させることが可能です。

責任の明確化と心理的抑制:責任の帰属

責任の帰属とは、個人が自身の行動に対して責任を持つ意識が高まる心理的な状態を指します。業務において、責任が個々に明確に割り当てられている場合、従業員は自分の行動に対する責任を強く感じ、不正行為に対する抑制力が高まります。逆に、責任が曖昧だと、不正行為に対する抵抗感が弱まる可能性があります。職務分掌や役割分担を明確にすることで、従業員の責任意識を高め、不正行為の抑止力を強化できます。

組織への信頼と心理的安全性:集団凝集性

集団凝集性は、チームや組織のメンバー間で信頼や帰属意識が強いほど、その集団内での協調的な行動が促進される心理的現象です。心理的安全性が高く、組織への忠誠心や信頼が確立されている職場では、従業員は組織に貢献しようとする傾向が強くなり、不正行為を行う可能性が低下します。従業員同士や上司との信頼関係を築くことで、内部不正を防ぐ効果が期待できます。

ログ管理システムの導入

すべてのアクセスを記録するログ管理システムを導入し、その運用と目的を従業員に明確に伝えることが重要です。単に「監視されている」という事実だけでなく、その目的が従業員に理解されることで、取り組みに対する納得感が生まれ、組織全体のセキュリティ意識が向上します。これにより、従業員は「自分の行動が記録されている」という意識を持ち、不正行為を行いにくくなり、不正行為の抑止効果が期待できます。

定期的なセキュリティ教育の実施

従業員に定期的なセキュリティ教育を実施し、組織全体で高いセキュリティ意識を共有することが重要です。また、チームビルディングやフィードバックを通じて従業員間の信頼関係を強化することで、セキュリティ教育により従業員が共通の規範に従いやすくなり、同調バイアスが促進されます。さらに、チーム内の信頼と結束が深まることで、組織全体が一体となって不正行為に対する抑止力が強化されます。従業員が「チームの一員」としての意識を持つことで、組織への貢献意識が高まり、不正行為への抵抗感が増します。

最小権限の原則を適用したアクセス制御

業務に必要な最小限の権限のみを付与し、業務範囲外のデータやシステムへのアクセスを制限します。これにより、明確な責任の範囲が設定され、従業員は自分の行動に対して責任を持つ意識が高まります。過剰な権限が与えられないことで、責任の所在がはっきりし、権限の乱用や不正行為が効果的に抑止されます。

特権ID管理の活用

特権IDの使用状況を監視し、適切な使用を評価・推奨する仕組みを導入することが重要です。特権IDが適切に運用され、使用が監視されている場合、従業員は正しい行動を取るインセンティブを持つようになります。適切な行動が評価されることで、不正行為のリスクが減少し、組織全体の安全性が向上します。

特権ID管理について詳しくはこちらのコラムをご覧ください。

特権ID管理とは?基礎知識やID管理との違いをわかりやすく解説

内部不正を防ぐためには、技術的な対策だけでは不十分であり、心理学的な観点からの対策も同様に重要です。企業が従業員の行動に働きかけるためには、心理的な要因を考慮し、従業員が不正行為に対して高い抵抗感を持つ環境を整える必要があります。具体的には、従業員が自分の行動に責任を持ち、監視されているという意識を持たせることが効果的です。これにより、不正行為を抑制する心理的なハードルが高くなります。

また、企業全体で取り組むべき文化的・心理的な要素の整備も不可欠です。従業員が組織の一員として責任感を持ち、倫理的な行動を促進する企業文化を育むことで、内部不正を防ぐための強固な基盤が築かれます。こうした文化的・心理的な要素の整備こそが、長期的に内部不正を防止するための鍵となります。

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Writer 雫田 貴一
WEEDS SYSTEMSのWebマーケティング担当者。
マーケティングだけでなく、システムの導入からセールスのサポートに至るまで幅広く手掛けています。
情報セキュリティに不安を感じるユーザーの悩みや課題を解決すべく、日々情報発信に努めています。