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特権ID管理はなぜ重要?業界別ガイドラインに基づく対応策を解説


WEEDS Trace 特権ID管理ソリューションについて詳しく紹介した資料です。

こんな方におすすめです。

・特権ID管理の必要性を感じている方
・低コストで特権ID管理を導入したい方
・不正アクセスなど情報セキュリティの課題を解決したい方
・特権ID管理ツールについて詳しく知りたい方


  1. 特権ID管理とは
  2. 業種・業界ごとのガイドライン
  3. 特権ID管理のあるべき姿
  4. 特権ID管理における課題
  5. 特権ID管理ツールという選択肢

特権IDとは?

特権IDとは、システムやネットワークを管理するための高度な権限を持つアカウントのことを指します。具体的には、システムの設定変更、データの追加・削除、その他のユーザーのアクセス権限の設定などの操作が可能です。一般的には「ルートアカウント」や「管理者アカウント」と呼ばれます。

特権IDはIT部門の担当者やシステム管理者が保持し、企業のITインフラを適切に運用・管理するために使われます。特権IDによって、システムの維持管理が効率的に行われ、企業のIT業務の安定性が確保されます。

適切に管理されていない特権IDは、重大なリスクを招く可能性があります。例えば、特権IDが不正に利用されると、重要な情報が漏えいしたり、システムが悪意のある攻撃にさらされたりするリスクがあります。このため、特権IDの適切な管理は、企業にとって非常に重要な課題となります。

特権ID管理とは?

特権ID管理とは、特権IDの使用と保護を確保するために行います。特権IDは、サーバー管理者やデータベース管理者など、特定の役職の人々が業務を遂行するために必要な権限です。その一方で、その強力な権限が不適切に管理されると、悪意のある第三者に利用されたり、意図しない結果を招く可能性があります。そこで、特権IDを適切に管理することが、企業の情報資産を保護し、ITインフラの安全性を維持するために極めて重要となります。

特権ID管理についてさらに詳しく知りたい方は、以下のコラムをご覧ください。このコラムでは、特権ID管理の基本とその重要性について詳しく解説しています。

特権ID管理とは?基礎知識やID管理との違いをわかりやすく解説

本章では、特権ID管理に関する業界別のガイドラインを紹介します。各業界は、それぞれの特性やリスクに応じたガイドラインを策定しており、特権IDの管理はその中でも重要な要素とされています。これらのガイドラインを理解し、適切に対応することで、業界特有のサイバーセキュリティリスクを軽減し、組織全体の安全性を高めることができます。

金融分野におけるサイバーセキュリティに関するガイドライン(案)(金融庁)

「金融分野におけるサイバーセキュリティに関するガイドライン(案)」は、金融機関等のサイバーセキュリティ管理体制を強化するために、金融セクター内外の状況変化を考慮し、従来の監督指針や事務ガイドラインとは別に、より詳細な対応策を提示したものです。金融機関等は、このガイドラインに基づき、監督指針等の改正案が成立した後に、必要な体制の整備を行うことが求められます。

詳しくはこちらの金融庁HPをご覧ください。
「主要行等向けの総合的な監督指針」等の一部改正(案)及び「金融分野におけるサイバーセキュリティに関するガイドライン」(案)の公表について

このガイドラインにおいて、認証・アクセス管理に関しては、認証及びアクセス権の付与に係る方針及び規程等を策定し、定期的に見直すことが求められています。規定には以下の観点を含める必要があります。

  • 職務の分離を考慮し、アクセス権限を必要最小限に制限すること
  • アカウントの不正使用を防止するために、定期的な棚卸や操作履歴のレビューを実施すること
  • 特権アカウントの利用を厳格に制限し、管理すること
    (例:多要素認証、操作のダブルチェック、アカウントの時間制限の設定等)

これらを実現する具体的な対応策として、まず、特権アカウントの利用者を明確にし、最小権限の原則を徹底することが挙げられます。さらに、定期的な監査を実施し、特権アカウントの利用状況を監視することで、異常な操作や不正アクセスを早期に発見します。

また、特権アカウントのアクセス管理は多要素認証の導入や利用時間の制限が求められています。特権アカウントの利用時間を制限し、例えば、必要な時だけアクセスを許可することで、特権アカウントの安全な運用を確保し、セキュリティリスクを効果的に低減できます。

中小企業の情報セキュリティ対策ガイドライン(IPA)

「中小企業の情報セキュリティ対策ガイドライン」は、中小企業の経営者が認識すべき指針と社内での具体的な対策手順を示しています。ガイドラインは、テレワークの普及やDX推進などの社会変化を踏まえ、2022年の第3.1版で改訂され、テレワークの安全な実施やセキュリティインシデント対応の方法を新たに追加しました。中小企業はIT活用が進む一方で、サイバー攻撃のリスクが高まっており、早急な対策が求められています。

中小企業の情報セキュリティ対策ガイドライン(IPA 独立行政法人 情報処理推進機構)

中小企業の情報セキュリティ対策ガイドラインでは特権ID管理について以下のような記載があります。

情報システムの特権(コンピュータを管理するために与えられた最上位の権限)の利用申請や権限付与、操作ログなどを管理する技術。例えば、サイバー攻撃や内部不正などによる、特権の不正利用を防止し、リスクを軽減することができます。

また、ログ管理については以下のように記載されています。

サーバー等に誰がログインしたかや、どのデータに対してアクセスがあったかは、サーバー上にログファイルとして記録されます。ログファイルの内容はサーバー等の運用期間に応じて増えていくので、一定期間(例:1週間、3か月、1年)などの期間で自動的に削除されるように設定されているのが一般的です。サイバー攻撃があった場合、このログファイルに書かれている内容をもとに、情報漏えいが生じたかどうかを分析するので、ログファイルをどのように管理するかの方針を、組織として定めておくことは重要です。一方で、ログファイルの内容を十分に理解するには専門的な知識が必要となるため、こうした管理を容易にするためのツール類も提供されています。

特権ID管理の対応策

  • 権限の管理
    • 必要な人にだけ特権を付与し、定期的に見直しを行います。
  • 操作ログの記録と監視
    • すべての操作を記録し、不正な動きを監視します。
  • アクセス制御の強化
    • 不要なアクセスを制限し、セッションを管理します。

ログ管理の対応策

  • ログの保存期間を設定
    • 一定期間ごとに古いログを削除し、適切に管理します。
  • ログの定期分析
    • ログを定期的に確認し、異常な活動を早期に発見します。
  • 管理ツールの利用
    • ログの管理を効率化するためのツールを導入します。

これらの対応策を実施することで、サイバー攻撃や内部不正のリスクを軽減し、組織のセキュリティレベルを向上させることができます。

自工会/部工会・サイバーセキュリティガイドライン(JAMA / JAPIA)

近年、サイバー攻撃は自社内だけでなく、サプライチェーン全体を狙うものが増えており、自動車産業のセキュリティリスクが深刻化しています。これに対応するためには、業界全体でリスクを理解し、適切な対策を取ることが重要です。そこで、日本自動車工業会(JAMA)と日本自動車部品工業会(JAPIA)は、自動車産業特有のリスクに対応するフレームワークと自己評価基準を示すセキュリティガイドラインを2020年に策定しました。これにより、業界全体のセキュリティ対策の向上と効率的な点検を推進しています。

自動車産業サイバーセキュリティガイドライン(JAMA)

このガイドラインでは、特権IDの管理におけるセキュリティリスクを軽減するため、以下の対応策を推奨しています。
まず、特権IDの発行、変更、削除については、申請・承認制を導入することで、特権IDの乱立や誤った権限付与を防ぎ、適切に管理することが求められます。また、付与する権限は業務に必要な最低限に限定し、不正利用のリスクを最小限に抑えるようにします。
次に、ユーザーIDおよびシステム管理者IDについては、定期的に棚卸を行い、不要なIDを削除することが重要です。これにより、退職者や役割変更のあった従業員のIDが残存することによるリスクを回避し、セキュリティを強化します。
さらに、重要情報を扱うシステムでは、運用状況を常に監視し、アクセスログを安全に保管・管理することが推奨されます。適切なアクセス制御を行い、ログの改ざんや不正アクセスを防止することで、万が一のインシデント時にも迅速かつ適切な対応が可能となります。

まとめると以下の対応策が推奨されています。

  • 付与する権限は業務に必要な最低限に限定し、特権IDの発行や変更は申請・承認制を導入する
  • 重要な情報を扱うシステムでは、アクセスログを保管・管理し、運用状況を監視する

これらの対応策を実施することで、特権IDの管理の精度を高め、セキュリティリスクを大幅に低減し、組織全体のセキュリティレベルを向上させることが期待されます。

医療情報システムの安全管理に関するガイドライン(厚生省)

「医療情報システムの安全管理に関するガイドライン」は、患者の電子カルテなど、個人情報の中でも特に厳重な保護が求められる医療情報を適切に管理するために、国が定めたものです。このガイドラインの対象は、医療機関などで電子的な医療情報を扱う責任者ですが、医療情報の共有が広がる中で、ヘルスケアに関わる方にも一度目を通すことが推奨されています。
また、このガイドラインの対象となる医療情報システムは、医療情報を保存するシステムだけでなく、医療情報を扱うシステム全般を想定しています。

医療情報システムの安全管理に関するガイドライン(厚生省)

利用者認証については、システムの適切な運用を確保するために、必要最小限の権限を設定し、正当な利用者のみがアクセスできるようにすることが求められています。そのため、システムには利用者の識別と認証を行う機能が備わっている必要があり、特に令和9年度時点での稼動が想定される場合、原則として二要素認証の導入が求められます。

また、医療情報システムが適切に運用されているかどうかを確認するために、システム上のすべてのアクセスログを収集し、定期的にレビューすることが推奨されています。特に個人情報を含む資源に対しては、すべてのアクセスログの内容を詳細にチェックし、不正利用がないことを確認する必要があるとされています。

医療情報を取り扱う情報システム・サービスの提供事業者における安全管理ガイドライン(総務省 / 経済産業省)

このガイドラインは、「クラウドサービス事業者が医療情報を取り扱う際の安全管理に関するガイドライン」(総務省)、および「医療情報を受託管理する情報処理事業者における安全管理ガイドライン」(経済産業省)が定める要件を整理・統合したガイドラインです。
対象となる事業者は医療機関等に医療情報システムやサービスを提供する事業者となります。また、医療機関等と直接的な契約関係のない事業者も、医療情報システム等のサプライチェーンの一部としてシステムやサービスを提供している場合は、本ガイドラインの対象事業者となります。
情報技術の進展、医療情報の連携方法の多様化、サイバー攻撃の巧妙化に対応するため、令和5年7月7日に改定されています。このガイドラインの対象事業者は最低限の適格性を示すため、プライバシーマーク認定またはISMS認証の取得が求められています。

医療情報を取り扱う情報システム・サービスの提供事業者における安全管理ガイドライン(総務省 / 経済産業省)

各業界のガイドラインには、特権ID管理に関する具体的な要件が記載されていますが、求められる対応は共通していると言えるでしょう。業種や業界にかかわらず、特権IDの利用を制限し、その使用状況を監査することは、不正アクセスを防止し、システム全体の安全性を確保するために不可欠です。このように、特権ID管理はどの業界においても重要な要素であり、適切な管理が組織のセキュリティ強化に直結することが分かります。

本コラムで取り上げたガイドライン以外でも、特権ID管理は多く求められています。その他の国際規格やガイドラインについては以下のコラムで解説しています。

特権ID管理のガイドライン活用、組織全体のセキュリティ強化策

特権ID管理の基本方針としてのアクセス制御

特権IDの利用を制限し、許可された作業のみで特権IDを使用するようにすることは、特権ID管理の基本です。これにより、不要な特権アクセスを防ぎ、システム全体のセキュリティを向上させることができます。

しかし、これだけでは不十分です

特権ID管理の真の目的は、特権IDが適切に使用され、悪用されないようにすることです。そのためには、アクセス制御だけでなく、ログの取得と継続的な監査が欠かせません。特権IDの操作ログを詳細に取得し、定期的に監査することで、どの操作がいつ、誰によって行われたのかを確認し、不正使用や不審な操作を迅速に検出・対応することが可能になります。

アクセス制御と監査で特権ID管理のあるべき姿を

特権IDの利用をアクセス制御によって制限することは、セキュリティ強化のための重要なステップです。しかし、それだけでは特権ID管理の目的を十分に達成したとは言えません。特権ID管理の真の目的は、不正アクセスや操作のリスクを最小化し、システム全体の安全性と信頼性を確保することにあります。そのためには、アクセス制御に加えて、特権IDの使用状況を詳細にログとして取得し、定期的に監査することが不可欠です。これにより、誰がいつ何をしたかを明確にし、不正や異常な操作を早期に発見・対応できます。特に、インシデント対応やコンプライアンスの観点からも、ログの取得と監査を通じた継続的なチェックが求められます。適切な運用を維持し、組織全体のセキュリティを強化するためには、このような多層的な管理が特権ID管理の本質であり、欠かせない要素です。

不適切なアクセス権限への対処

特権ID管理における最も大きな課題の一つは、不適切なアクセス権限の付与です。ユーザーに対して過剰な権限が与えられると、不正アクセスや内部不正のリスクが高まります。これを防ぐためには、「最小権限の原則」を徹底することが重要です。具体的には、そのユーザーの業務に必要な最低限の権限のみを与え、アクセス権限は定期的に見直して不要な権限を削除する運用が求められます。これにより、セキュリティリスクを減少させ、強固な内部統制を実現することができます。

パスワード管理の改善

パスワード管理の改善も特権ID管理の重要な課題です。複雑で予測されにくいパスワードを使用し、定期的に変更することで、セキュリティの強化を図ることができます。加えて、パスワードの共有を禁止し、各ユーザーが自分のパスワードを責任を持って管理する体制を整えることが不可欠です。これにより、パスワードの漏洩や不正使用のリスクを最小限に抑えることができます。

操作ログの保存性と検索性

特権IDの使用に関する操作ログの保管と分析も不可欠です。すべての操作を詳細に記録し、これらのログを定期的にレビューすることで、不正な操作やポリシー違反を早期に発見し、適切な対応を取ることが可能になります。また、操作ログは単に記録するだけでなく、その保存性と検索性が重要です。長期間にわたって安全に保存できる体制を整えるとともに、必要な情報を迅速に検索できる仕組みを構築することで、インシデント発生時の調査や監査を効率的に行うことができます。適切なログ管理は、不正行為の検出と迅速なインシデント対応において重要な役割を果たし、組織全体のセキュリティ体制を強化します。

特権ID管理の課題を解決するためには、特権ID管理ツールの導入が非常に有効な手段の一つです。特権IDはシステム全体へのアクセスや重要な操作を行う強力な権限を持つため、適切に管理されないと不正アクセスや内部不正のリスクが高まります。特権ID管理ツールを導入することで、これらのリスクに対処し、組織のセキュリティ体制を強化する多くのメリットがあります。

まず、管理業務の自動化による負担の軽減です。特権ID管理ツールは、アクセス権限の付与や取り消し、定期的な権限の見直し、操作ログの収集と分析など、手間のかかる作業を自動化します。これにより、管理者の負担を大幅に減らし、人的ミスを防ぎながら効率的な運用を実現します。また、管理プロセスの標準化によって、組織全体のセキュリティ管理がさらに強化されます。

次に、監査証跡の適切な保存です。特権ID管理ツールは、機密性、完全性、可用性というセキュリティの3原則に基づいて、すべての特権IDの操作を詳細に記録し、監査証跡を適切に保存します。これにより、データの改ざんや不正操作を防ぎ、法令遵守や内部監査の要件を確実に満たすことができます。また、インシデント発生時には迅速な対応が可能になり、セキュリティリスクを最小限に抑えることができます。

このように、特権ID管理ツールの導入は、特権ID管理の課題を効果的に解決し、組織全体のセキュリティを強化するとともに、効率的な運用を支える重要な手段となります。

特権ID管理ツールの導入には多くのメリットがありますが、コストが課題となる場合もあります。特権ID管理ツールは、セキュリティ対策として非常に効果的である一方で、比較的高額なツールになります。そのため、導入にあたってはコスト面での検討が重要です。

限られた予算で特権ID管理ツールを導入したい場合には、WEEDS Traceがおすすめです。WEEDS Traceは、必要な機能を備えながらもコストを抑えて提供しており、特権ID管理の導入を考える企業にとって、限られた予算で最大の成果を得られる選択肢となります。

WEEDS Trace特権ID管理ソリューションの3つのポイント

特権ID管理の運用ワークフロー
アクセスログでの監視項目
特権ID管理の導入コスト

WEEDS Trace 特権ID管理ソリューションについて詳しく紹介した資料です。

こんな方におすすめです。

・特権ID管理の必要性を感じている方
・低コストで特権ID管理を導入したい方
・不正アクセスなど情報セキュリティの課題を解決したい方
・特権ID管理ツールについて詳しく知りたい方

Writer 雫田 貴一
WEEDS SYSTEMSのWebマーケティング担当者。
マーケティングだけでなく、システムの導入からセールスのサポートに至るまで幅広く手掛けています。
情報セキュリティに不安を感じるユーザーの悩みや課題を解決すべく、日々情報発信に努めています。