ログ管理でインシデントを未然に防ぐ!ヒヤリハットの活用法
情報セキュリティにおいて、大規模なインシデントの背後には、小さなミスや予兆、無意識の行動が存在します。これらの「ヒヤリハット」を見逃さずに検知しフィードバックを行うことが、情報漏洩を未然に防ぐために非常に重要です。本コラムでは、ログ監視を通じてヒヤリハットを検知する具体的な方法やリスク軽減策について説明します。
1. ヒヤリハットとは?
ヒヤリハットは、事故やインシデントに繋がる寸前の「ヒヤッ」とした瞬間を指します。元々は製造業や医療現場で使われる安全管理の用語ですが、近年では情報セキュリティの分野にも応用されています。大きな事故やインシデントが発生する前には、必ずといってよいほど「ヒヤリ」とする出来事が存在します。
情報セキュリティにおけるヒヤリハットでは、小さな予兆を見逃さないことが重要です。これを実現するために、ログ管理が有効な対策として注目されています。ログを活用し、異常な動きや操作の兆候を検知することで、予兆を早期に捉え、迅速にフィードバックを行うことができます。このフィードバックに基づいて、必要な対策や改善策を講じることで、問題が拡大する前にリスクを軽減し、大きなインシデントの発生を未然に防ぐことが可能です。適切な改善を継続することで、セキュリティ体制全体の強化にも繋がります。
2. ログ管理でヒヤリハットを検知する方法
ログ管理を通じて、小さな予兆やリスクを早期に発見することができます。ヒヤリハットを効果的に捉えるには、適切なログの活用と監視が重要です。ログを定期的に確認し、異常な動作や兆候を見逃さないことで、潜在的なリスクを迅速に把握し、問題が拡大する前に対応することが可能です。
不審な時間やIPアドレスからのアクセス検知
通常業務時間外に行われるアクセスや操作は、ヒヤリハットの兆候である可能性があります。たとえば、深夜や休日のログインや重要なデータへのアクセスが発生した場合、通常の操作ではない可能性があります。また、社内ネットワーク外からのアクセスや、通常アクセスしない場所からの接続が行われた場合、無意識のミスや不正行為の前兆である可能性があります。
アクセス回数の急激な増加やログイン失敗
特定の従業員やアカウントによる短時間での異常なアクセス回数の増加は、誤操作や不正アクセスの兆候である可能性があります。たとえば、複数のシステムやファイルに短期間で連続してアクセスされている場合、警戒が必要です。特に、連続して複数回のログイン試行が失敗した場合、無意識に誤ったID、パスワードを使用しているか、第三者による不正アクセスの試行が疑われます。
権限外のファイルアクセスや削除・変更
従業員が通常業務でアクセスしないファイルやフォルダに対して不審なアクセスがあった場合、無意識のうちに誤操作をしているかもしれません。また、データが短期間で頻繁に削除されたり、内容が変更されている場合、意図しない誤操作や情報隠蔽の試みが疑われます。
外部デバイスの不正使用
外部のUSBデバイスやストレージ機器が社内システムに接続されてデータのコピーや移動が行われた場合、それがヒヤリハットとして情報漏洩につながる可能性があります。悪意を持っていない場合でも、紛失や盗難による情報漏洩のリスクが潜んでいます。
3. フィードバックの重要性
フィードバックは、セキュリティ体制を強化するために不可欠です。 ログ管理を通じて検知された異常やヒヤリハットに対して、適切なフィードバックや対策を行うことで、ミスや異常の再発を防ぎ、セキュリティ全体の向上に繋がります。
再発防止と運用の改善
ログ監視でヒヤリハットを検知し、それに基づいてフィードバックを行うことで、アクセス権限等の設定ミスや誤操作を早期に発見し、再発防止策を講じることができます。例えば、従業員が本来アクセスできないはずの機密情報にアクセスしていることがログ監視によって発覚した場合、それが権限設定の誤りや運用フローの不備によるものかどうかを特定し、改善策を講じることができます。権限付与プロセスの見直しや定期的なレビューを導入することで、システム全体のセキュリティが強化され、再発防止にもつながります。
従業員のセキュリティ意識向上
フィードバックを通じて従業員にセキュリティ意識を植え付けることができるため、全体的なセキュリティ文化が強化されます。例えば、セキュリティトレーニングや教育の一環として、実際に検知されたヒヤリハット事例を共有することで、従業員が自分の行動がどのようにセキュリティに影響を与えるかを認識します。これにより、組織全体でのセキュリティ意識が向上し、将来的なリスク軽減につながります。
システムの改善と効率化
ログのフィードバックによって、システム全体の脆弱性や運用上の問題点が明らかになります。例えば、特定の作業において頻繁に異常検知されている場合、それがシステムの設定ミスや運用フローの不備によるものかどうかを特定し、改善策を講じることで、システムの安定性と効率性が向上します。このようにして、セキュリティリスクだけでなく、業務効率の面でも大きな改善が見込まれます。
検知したヒヤリハットを放置せず、適切な対策や改善を行い、今後同じ問題が再発しないようにすることが、セキュリティ対策として本当に効果的であるといえます。これにより、初めて検知した情報が意味を持ち、セキュリティ体制全体が強化され、重大なインシデントを未然に防ぐことが可能になります。
4. ログ管理を成功させるには
ログ管理は、情報セキュリティを強化し、インシデントを未然に防ぐために非常に重要ですが、よくある失敗として「ログを取得しているが、それを活用できていない」という状況が挙げられます。大量のログを取得しても、正しく活用できなければ、単なるデータの蓄積に過ぎません。
ログ管理を成功させるために、最初からすべてのシステムや操作を監視するのは現実的ではありません。膨大なデータを一気に管理しようとすると、リソースの無駄や管理コストの増加につながり、結果的に活用しきれなくなります。そこで重要なのは、監視項目を絞り、段階的にPDCAサイクルを回す体制を構築することです。
優先的に監視すべき項目
効果的なログ管理を始めるには、まず監視すべき重要な項目を選定することが大切です。
以下は、よく監視されるべき項目の一例です。
・複数回のログイン失敗を監視
不正なアクセスや誤操作の兆候を早期にキャッチするために、ログイン失敗の回数を監視することは基本的な対策です。
・深夜帯や休日など通常とは異なる時間のログインを監視
通常の業務時間外に発生するアクセスは、不正行為の予兆である可能性が高いため、これらの異常な時間帯のログインをチェックすることが重要です。
・許可されていないIPアドレスからの接続
社外の不正なIPアドレスからの接続は、サイバー攻撃や内部からの情報漏洩のリスクを示唆するものです。これを監視することで、外部からの攻撃を早期に発見できます。
・許可されていない外部デバイスの使用
USBメモリや外部ストレージなどの未承認デバイスを使用したデータの持ち出しは、情報漏洩のリスクを高めるため、これも監視項目に含めるべきです。
これらの監視項目は、該当するログが出力されるかどうかを確認するだけで管理が可能です。最初のステップとして、これらの分かりやすい予兆を発見し、適切にフィードバックする仕組みを構築することがログ管理の成功への近道です。最初はシンプルな監視項目に絞り、少しずつリスクや予兆の検知範囲を拡大していくことで、効果的なログ管理体制を無理なく構築できます。
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