コラム

COLUMN

なぜ内部不正が起きるのか?リスクが高まる環境の特徴

  1. 内部不正のリスクとその影響
  2. 内部不正が発生しやすい環境とは?
  3. 原因1:過剰な権限付与による不正リスク
  4. 原因2:監視の不備が生む「見られていない」という安心感
  5. 原因3:リモートワーク環境におけるアクセス管理の緩さ
  6. 内部不正の共通要因は心理的ハードルの低さ

内部不正は、従業員や関係者がシステムやデータに不正アクセスを行い、情報の改ざんや流出を引き起こす行為です。外部攻撃と異なり、信頼された内部の人物によるため、発見が遅れることが多く、その影響は非常に大きいです。

企業が内部不正を許してしまうと、信頼の喪失、顧客や取引先との関係悪化、法的措置など、事業継続に深刻な影響を与える可能性があります。また、金銭的な損失や業務停止に追い込まれるケースも少なくありません。

内部不正は企業の規模や業種を問わず発生し、特に発見が遅れると被害は拡大します。このリスクに対処するためには、内部不正が発生しやすい環境とその根本的な要因を理解し、適切な対策を講じることが重要です。

内部不正が発生する背景には、企業の管理体制や従業員が働く環境が大きく影響しています。特に、従業員が不正行為を「実行しやすい」「発覚しにくい」と感じる環境では、不正行為に対する心理的な抵抗が薄れ、内部不正の発生リスクが高まります。ここでは、内部不正が起こりやすい3つの要因について解説します。

従業員に必要以上のアクセス権限が与えられていると、不正なアクセスやデータの操作が起こりやすくなります。例えば、管理者レベルの権限が適切に管理されていない場合、権限の乱用が発生するリスクが高まります。

従業員が適切に監視されていない、または監視が不十分だと感じる環境では、不正行為に対する心理的な抵抗が低くなります。監視ログの取得や定期的な確認が不十分な場合、従業員は「誰にも見られていない」という安心感を持ち、不正行為に走りやすくなります。

リモートワークの普及により、オフィス外からシステムにアクセスする機会が増えています。オフィス内では物理的な監視や入退室管理が存在しますが、リモート環境ではこれらの抑止力がなく、不正を行いやすい状況が生まれます。アクセス制御が緩いと、「見られていない」という感覚が従業員に芽生え、不正行為が発生するリスクが高まります。

不正が行いやすい環境の一つに、従業員に必要以上の権限が与えられているケースがあります。特に、システム管理や運用保守のために管理者権限が付与される場合、業務に不要な情報へのアクセスが可能になり、不正リスクが高まることがあります。

例えば、システムの運用保守を担当する従業員に管理者権限を与えた結果、顧客情報の閲覧が可能になってしまうケースがあります。このように、業務に直接関係しないデータにアクセスできる状況が作り出されると、不正行為を行いやすい環境が生まれてしまいます。

過剰に付与された権限により、従業員は機密情報へのアクセスが可能になります。特に、重要なデータや顧客情報へのアクセスが不必要に許可されている場合、従業員が意図的に情報を悪用するリスクが高まります。監視や制御が不十分な場合、不正行為を行うハードルが低くなり、従業員が権限を乱用するリスクが増加します。

不正行為が発生しやすい要因の一つに、監視体制の不備があります。多くの企業では、システムのアクセスログを取得しているものの、それらのログが「貯めるだけ」になっているケースが少なくありません。ログを取得していても、実際に確認されなければ、不正行為の兆候を見逃すリスクが高まります。

企業の多くは、システムへのアクセスログを収集しているものの、その後の監査や分析が不十分であることがあります。特に、ログを貯めることが目的となり、実際に不正行為の監視や確認に活用されないケースが目立ちます。このような状況では、監視体制が形骸化しており、不正行為を防ぐ効果が期待できません。

従業員にとって、監視の存在は一定の抑止力を持ちますが、ログが確認されていないことを察知すると、「誰も見ていない」と感じやすくなります。監視が不十分だと、不正行為を行う心理的なハードルが下がり、従業員が不正に手を染める可能性が高まります。例えば、ログが収集されてもチェックされていなければ、不正行為が発覚する可能性は低くなると認識され、責任感が薄れがちです。

リモートワークの普及に伴い、企業における内部不正のリスクが増加しています。リモート環境では、従業員がオフィス外からシステムにアクセスする機会が増え、そのアクセス管理が適切でないと、不正行為を行うリスクが高まります。オフィス内では、物理的な監視や入退室管理によって不正行為を防ぐ要素がありますが、リモートワークではこれらの要素がなくなり、不正行為を行いやすい環境が生まれてしまいます。

オフィス内での業務では、同僚や上司の目があり、作業の様子が自然と共有されるため、不正行為を抑制する効果があります。しかし、リモートワークでは自宅など、オフィス外の環境で業務を行うため、他の人に見られているという感覚が薄くなり、不正行為に対する抵抗感が低下する可能性があります。これにより、不正行為を行うハードルが下がり、リスクが増加します。

リモート環境でのアクセス管理が不十分だと、従業員は必要以上のシステムやデータにアクセスできる状態になることがあります。たとえば、管理者権限を持つ従業員が、業務上必要のないデータやシステムにアクセスできる場合、不正利用やデータ漏洩のリスクが増大します。また、リモート環境では、デバイスのセキュリティが十分でないことも多く、外部からの攻撃による情報漏洩リスクも高まります。

これまでに挙げた要因—過剰な権限付与、監視体制の不備、リモートワーク環境におけるアクセス管理の緩さ—に共通しているのは、不正行為に対する「心理的ハードルの低さ」です。内部不正は、従業員が「バレないだろう」「見つからないだろう」という安心感を抱く環境で発生しやすくなります。心理的ハードルが低いと、従業員は自分の行為が監視されていない、あるいは監視されていても対処されないと考え、不正行為を実行する可能性が高まります。

強い権限を持つ従業員は、重要な情報や業務に不要なデータに簡単にアクセスできる状況にあります。その結果、権限の乱用や不正行為が発生するリスクが高まります。

監視体制が不十分な場合、たとえログが取得されていたとしても、確認されていない、またはチェックが行き届いていない状況では、従業員は「誰にも気づかれない」と感じやすく、不正行為に対する心理的な抵抗が低くなります。

リモートワーク環境では、物理的な監視や同僚の目がないため、従業員が自宅や外部の環境で業務を行う際に、より自由に行動できるという錯覚を持ち、不正行為に対するハードルが低くなることがあります。

内部不正を防ぐためには、従業員が不正行為を行うことに対して強い抵抗を感じるよう、心理的ハードルを上げる対策が必要です。

最小権限の原則を適用し、従業員が必要以上の権限を持たないようにすることで、不正行為を実行できる範囲を限定します。また、監視強化のため、ログを定期的に確認し、不正の兆候を早期に発見できる体制を整え、従業員に対して監視されているという意識を持たせます。リモートワークでは、アクセス管理とログ監視の徹底が重要です。端末のセキュリティ対策やアクセスログの定期チェックを行うことで、異常なアクセスを早期に発見し、不正行為を防止できます。また、従業員のセキュリティ意識を高めるための定期的な研修も効果的です。

内部不正が起きにくい環境構築のための具体的な対策について詳しくはこちらのコラムをご覧ください。

内部不正のリスクを減らす心理学的アプローチとは?

Writer 雫田 貴一
WEEDS SYSTEMSのWebマーケティング担当者。
マーケティングだけでなく、システムの導入からセールスのサポートに至るまで幅広く手掛けています。
情報セキュリティに不安を感じるユーザーの悩みや課題を解決すべく、日々情報発信に努めています。